妻と一緒に特攻
テレビ朝日で、戦後70年ドラマスペシャル「妻と飛んだ特攻兵」を見た。このドラマはノンフィクション作家豊田正義氏の「妻と飛んだ特攻兵~8.19満洲 最後の特攻」に拠っている。
玉音放送から4日後、11機が草原の飛行場を飛び立ち、満洲に攻め入ってくるソ連軍の戦車隊に特攻していった。満洲にいた邦人を少しでも安全に逃避させるためだった。その中に妻と一緒に特攻した将校がいた。名前は矢藤徹夫、妻の名は矢藤朝子。朝子さんは戦闘機に乗る前に夫から贈られた白いワンピース姿に身を包んで九七式戦闘機の後部座席に座った。死に装束だったのだろう。
草原を飛び立った夫の徹夫が言う。「心残りは君を新婚旅行につれていってあげられなかったことだ」。それにたいして妻の朝子が答える。「これが私達の新婚旅行よ」
大空に舞い上がった11機はソ連軍の戦車隊を認め、次々に旋回し、急降下していく。これは同胞を一人でも多く救うために、自らの意思で行なった特攻だった。
若い夫婦は満洲の地に散っていった。今は戦争のない天国で幸せな生活をしていることだろう。戦争は残酷だ。しかし、と思う。広島電鉄の技術者といい、2人の「凛とした精神性」(豊田氏の言葉)は日本人が世界に誇ることのできる生き方、身の処し方ではないか。
平和の時代に生きる私達は「凛とした無私の精神性」を忘れてはならない。