限界集落株式会社(下)新しい形の共同体-村落・都市共同体

記者会見で経営コンサルタントの多岐川が正登の発言(宣言)を覆さず黙っていたのは本当の意味での「仲間」という言葉の温かさ、いや熱さを感じたためではないかと私は思う。多岐川にとってはそのような言葉の内実は彼の人生、仕事には無かったに違いない。正登に家族の写真を見られ告白したことは「家庭を持ってからも金さえ入れていれば、仕事さえしていれば彼女たちは幸せになれると思ってた。そんな人間が家族から愛されるわけないです。仕事でも仲間に裏切られこの村に逃げ込んできて、そこであなたと娘さんに出会った。まさか3年経ってもここにいるとは」

記者会見の後、トマリ観光農園に工場経営者が奥さんと娘をつれてやってきた。大事なのは人です、に惹かれるようにして、工場をたたんでやってきたのだ。これからトマリ集落の仲間になる。そしてキャバクラ経営者のみずきは百瀬あかねの名前でモチキビ50本を大量注文する。直売所にもお客さんが戻り始めてきた。そして祭の日。畑で倒れた鉄平の父親も椅子に座って仲間と談笑している。多くの人達が祭に集まってきている。あのみずきも。鉄平は正登の後に獅子舞を舞う。正登と美穂は鉄平の獅子舞を見ながら、

美穂「来年もお祭開けるかな」

正登「どうかな・・・開けるといいな」

多岐川は美穂の祖母に野菜の煮込みを頼む。祖母は言う。

「野菜、食べられるようになったんだっけ」そして言葉を続ける「ありがとうね」

多岐川も礼を返す。

トマリ集落の資金繰りのために東京に融資を頼みにいった多岐川に元上司が言う。

「農家なんか見捨ててこっちに戻ってこないか」

「お断りします。面白いんです、限界集落」

日本の限界集落は農家だけの問題ではない。都市に住んでいる人間もこの限界に関わる時代に来ているのだと思う。それぞれの立場で。そして新しい形の共同体-村落・都市共同体を築く時代が。ひょっとするとそれが日本の将来を決めるかもしれない、とさえ思う。

エンディング。トマリ観光農園は人で溢れている。賑やかな声が聞こえ、笑顔が溢れている。そして最後に思ったのはこのドラマは先ほど亡くなった菅原文太さんに捧げるオマージュでもあったのではないか、と。撮影場所は菅原さんの有機農場のあった北杜市だった。

脚本も役者もカメラワークも素晴らしい、胸に残るドラマだった。