資本主義を肯定しながらそのモラルを問う
ビジネスモデルは経済体制を問わず構築可能であるが、やはりビジネスモデルとして最も光彩を放つのは資本主義社会であろう。かつて世界を席巻したマルクス主義はプロレタリアート独裁というビジネスモデル、つまり社会主義経済体制を産み出し、ソ連ではコルホーズ、ソホーズ、中国では人民公社などのコミューンを形成したが、経済不合理性の故に形骸化し、消滅していった。その結果、資本主義体制の優越性が証明されたかに見えるが、資本主義を支える高い倫理性が必ずしも適正に機能していないという問題がつきまとう。これは利潤をめぐる問題であり、目先の利潤と倫理は両立しがたいように思える。今回テレビドラマ「半沢直樹」が与えたメッセージは経済倫理の重要性ではないだろうか。企業社会のいわば血液を供給している銀行は恐らく経済倫理の中心にいる。半沢が大和田常務に土下座を迫るシーンの、声涙まさに下る言葉、「雨の日に傘を取り上げ・・・」は私達を経済のモラルとは何か、その原点にひき戻す。半沢が象徴しているのは、本来の銀行の姿、銀行員の本分だ。半沢の父が経営していた工場は結局地元の信用金庫からの融資で生き延びることができた。さて現在では殆どの人が、資本主義が人間にとって最良のシステム、との考えを持つようになっているように思える。外部から、かつてのようにマルクス主義の立場からの批判は批判として、今後は資本主義を肯定しながら、内在的にそれぞれの置かれた場で、モラルを問い、人が人を踏みにじることのない経済社会をつくるために提言、実行していくことが求められていると思う。この一貫した、誰をも恐れない半沢の誠実さが私たちのこころを打った、と私は考えている。高いモラルはレベルの高い経済社会を必ず創りだす。私はそう信じている。