総選挙を終えて

歳末の実に盛り上がらない選挙で自民党が勝った。野党では民主党と共産党は議席を伸ばし、維新は横ばいという結果になった。その他の小政党は大幅に議席を減らし、存在感はほぼ無くなってしまった。自民党と公明党が勝ったと思っているかもしれないが、私はそうは思っていない。逆に今回の結果で逃げ場がないところまで追い込まれたと考えている。どういうことか。

1.安倍首相は経済よりも政治的課題、端的に言えば「憲法改正」に政治生命をかけている。今回の結果を踏まえて、改正論議に踏み込んでいくことだろう。私達の若い頃と違い反対デモは起こらないと見ているはずだ。最近の中国の尖閣諸島を巡る脅威と小笠原諸島近海の珊瑚密猟に対する日本人の憤懣はエスカレートしてきている。世論操作も含め国防力の強化へと進んでいくと思われる。懸念されることはどこまで強化したら良いのか、歯止めがないことだ。国防力の強化は相手があることであり、相互にエスカレートする恐れがある。

2.アベノミクスは見解が別れる経済政策である。生産が停滞し、一方で金融バブルが起こったら日本経済が破綻しかねない。ここは生産水準を維持しつつ、潜在成長率の引き上げに地道に取り組むべきだろう。そのためにも法人税の減税と医療費と年金制度の見直しが欠かせない。法人税減税の財源は外形標準課税が見込まれている。多くの中小企業が悲鳴を上げることだろう。社会医療費の改革では国民に多大の犠牲を強いることになる。大衆迎合主義の政治ではない。国民と痛み、苦しみを共にして、日本の1千兆円を超える国家債務を減らし、一方でスイスの8万ドルを目標にしてGDP(国内総生産)を向上させる総合方策を自民党・公明党は打ち出さなければならない。安倍首相の本当の国民への呼びかけが求められるのは、これからだ。