真実を伝える

 

真実を伝えるということは大事なことだが、どうしたらそれができるか。一言に要約すれば、良いことも悪いことも含めて全体を伝える、ということだろう。しかし良いことは兎に角、悪いことを伝える、ということは頭で思うほど簡単ではない。なぜなら悪いことには自分の立場、責任が関係してくることが多いからだ。特に組織の中で仕事をしている人は意識していようが、無意識であろうが「自己保身本能」を持っている。自分の立場を悪くしたり、責任を問われることは避けたいと思う。そこで良い話だけをしようとする。イオンの元経営者の小嶋千鶴子氏はそのような人を「虚構性のある人物」と名付けた。上司が部下の報告を聞く時は、観察と質問を通して、上司は部下が虚構性のある人間に堕することがないように配慮すべきだ。悪い話を嫌な顔をしないで聞き、受け止める度量も必要だ。最終的には「この人の前では本当のことを、全体を話さなければいけない」と部下に思わせる信頼関係構築が上司には求められる。

詳しい事情は門外漢の私には分からないが、イオンとダイエーのその後の盛衰にはこのような要素もあったのではないかと思う。悪い話を避けず、悪い話を薬にして、あるいは磨きの砂にしていく社風が企業発展、繁栄の基になるのではないかと思う。

真実を伝え、真実を受け止め、そこから何をなすべきか、何をしてはならないか。組織全体で考え、実行していけば成功の道が開けるに違いない。