一番伝えたいことは何か

最近あるプロジェクトの件でCさんと話しあった。銀座の挽きたてコーヒー店での会話だ。私がプロジェクトの企画についていろいろと話した後で、Cさんが言った。 Cさん「素晴らしい話を聞かせてもらった。ありがとう。ところで阿部くんがこのプロジェクトで人々に一番伝えたいことはなんなのだろう。それがぼくにはまだはっきり見えないんだ。ぼくなりに頭の中で整理してみたんだが・・・。結局一番伝えたいことは何?」 「そうか」と私は不意を衝かれた思いで急いで考えた。「伝えたいことはいくつかある。あれもこれも。でもこれをまず何よりも第一に伝えたいということまで考えていなかったな」 暫く考え、コーヒーを啜ってから、これだと思ったことを言った。

Cさんは「なるほどね。でも何となくまだ絞りきれていない感じがする。今のところはそれでぼくも了解だ。ところで一番伝えたいことを伝えたら、人々はどのように受け止めてくれるだろうか。感動して行動を起こしてくれるだろうか」

私は唸った。「感動してくれるかなぁ・・・」

Cさんは言う。「人は頭で理解してもなかなか行動してくれないよ。損得勘定とか感動がないとね。できればボーリングのヘッドピンのように倒れて広がっていく力のある感動がほしいな。」

私は言った。「まだ突き詰めて考えていないことが分った。Cくん、気付かせてくれてありがとう。少し時間をくれないか」

Cさん「いいよ。畳み掛けるようで悪いね。もう一つ。それは阿部くんが本当にやりたいことなのか。またその分野の歴史をあたらしくつくるような仕事なんだろうか」

Cさんはいたずらっぽく笑って続けた。「ぼくがキミの立場だったら同じように簡単には答えられないと思う。悩むよ。質問するのは簡単だ。答える方がずっと難しい。人間は一つに絞るのがそもそも苦手なんだ。選択肢を多くして可能性を拡げ、環境変化に適応しおうと身構えている存在、それが人間だからね。この後、銀ブラでもしながら話の続きをしようか。散歩は血の巡りを良くするっていうから」