プロデュース力の第一番目 「企画力」について・続き
プロデューサーのセンス、能力が一番問われるのが企画力だ。津田氏によれば企画力は、先見性、構想力、クリエイティブ力、知識力で構成される力ということになる。先見性の次は構想力だ。私流に解釈すれば、構想力は今迄無かった新しい仕組み、新しい世界をつくる、ということになる。一言で表現すれば「夢」と言っても良いかもしれない。そのためには既成のもの、体制を乗り越える、つまり権威への挑戦も伴う。少数者として多数者に対峙しなければならない、という状況も生まれてくる。「そんなの無理だ。とても儲かる仕事じゃない」確か宅急便のクロネコヤマトを小倉さんが考え、社内に諮った時、社内の反応は大方そのようなものだったようだ。この構想を具体化するためには全体像を描き、仕組みをダイナミックに駆動させるエンジン、勘所を見つけることが大事だ。小倉さんは宅急便のハブ方式、スポーク方式の仮説を構築した。そして勘所は「集配密度」だった。構想に魂を入れるために、考え続け、求め続ける。諦めない。そして求め続けているうちに、ある日、天啓のように「確信」が与えられる。念ずれば花開く。時代がその構想に近寄ってきた瞬間だ。今迄白黒で描かれていた構想が色彩豊かになり、さらに立体的になり、立ち上がってくる。大きな全体像が立ち上がってきたら、次は個々の部分の問題の解決だ。さまざまな問題を解決するためには具体的、かつクリエイティブなアイデアが求められる。こうして構想を実現するためのプロトタイピング作業に行き着く。私は夢からプロトタイピング迄を構想力の中に入れたいと思う。そこには求め続ける、諦めないという姿勢も含まれる。先見性は未来を視る力。それに対して構想力は自分が視た新しい世界を現在に引き寄せる行為でもあり、現在を未来に向かって駆動させる行為でもある。精神的にも、身体的にもパワーが必要とされる。私の夢は東京のビルの屋上、空き地を緑で一杯にし、屋上と空き地で野菜を育て、収穫することだ。都市と農という一見対立するものを統合する東京の田園都市化という構想だ。江戸時代の江戸は田園都市だった。