ビジネスモデルの現実化
ビジネスモデルを実施した際、どのような手ごたえが出てくるか。ビジネスモデルデザイナーにとって一番緊張する時だ。ヤマト宅急便の小倉氏は次のように述べている。
「清水の舞台から飛び降りる気持で宅急便を開始したのが昭和51年1月23日。考え抜いた末の決断であったが、不安がないわけではなかった。理屈では必ず儲かる事業になると信じてはいたものの、儲けが出るまでに苦難が続くであろうことは間違いなかった」正直な気持だったのだろう。他の個所で「殆ど全員の反対を押し切ってのスタートだった」と氏は述べておられる。そして創業5年で採算点をクリアーして、経常利益率5.6%を達成した。「翌日配達」というキャッチフレーズは確実の利用者に気持にヒットした。このサービスの差別化がなければ、その後のヤマトの快進撃はなかっただろう。小倉氏は5年後、採算点をクリアーした時点で、宅急便のビジネスモデルが間違っていなかったことを
確信したに違いない。ビジネスモデルはその性格上、前例がないものである。うまくいくかどうか、実際のところはやってみなければ分からない、という部分がある。現在は巨大企業になっている楽天の「仮想店舗」のビジネスモデルもスタート当社は利用者の理解がなかなか得られなくて苦労の日々が続いたという話を聞いたことがある。ここで考えるべきことは、ビジネスモデルが現実のニーズ、ウオンツに着地したなら、その着地点をキチンと把握して、ビジネスモデルが現実にしっかり根を下ろすように、更なる努力する、ということだ。ヤマトは全国的ネットワークの完成に力を注いだ。
私自身がこれから実施しようとしているビジネスモデルはいくつかある。ヤマトにはとても及ばない小さなビジネスモデルだが、いずれもこれからの世の中にとってなくてはならないものだと思っている。それぞれのビジネスモデルを実装したプロジェクトを今年の秋から来年の春にかけて、1つづつスタートさせていくつもりだ。その際、ビジネスモデル同士の相互作用・発展、つまり「共進化」の実験もやってみたいと考えている。私にとって最後の挑戦になる。