地方創生と道州制について
地方再生を巡る議論をする場合、江戸時代の300藩体制が参考になる。加賀百万石のような大藩もあれば、1万石の小藩もあった。原則は10割自治と徳川幕府への絶対的服従であった。地方は現代のように地方交付金を受ける側ではなく、普請などで負担する側に立たされていた。当然財政事情は厳しくなる。他の藩に頼ることはできない。自力更生で各藩は生き抜いていくことを要求された。そのため米を初めとした農産物の増産、特産品の開発、人材の育成に力を注いだ。しかし全ての藩がこの課題をクリアーできた訳ではなく、行き詰まって潰れた藩もあった。分割して統治せよ、のある意味では極端なケースかもしれない。30藩ではなく300藩なのだ。経済的合理性という点からは余りに細かく分けすぎることは問題かもしれない。さてもう一つ、参考になるのはドイツだ。ドイツは領邦国家の集合体という歴史的な流れの中でいわば「地方分権」国家として現在に到る。分権型国家は一極集中型の国家に比べ、危機からの復元力が相対的に高いと言われる。その理由をきちんと解明する必要があるが、現在の日本は一極集中型国家だ。江戸時代、ドイツの現在の国家としてのあり方も参考にしつつ日本のこれからの国家のあり方そのもののモデルをつくる歴史的段階に来ている。明治維新国家のモデルは制度疲労を迎えている。まさに国家百年の大計だ。ポイントは成熟した先進国として持続可能な国家になることではないか。道州制なども議論のテーブルに上がっているが、基本は地方が本来的意味で「主体性」を持つことにあるように私には思われる。